社長挨拶

2016年、先代の社長と初めてお会いしました。
私が代表取締役を務めるスターフードジャパン株式会社では、関西国際空港で日本各地の地域食材や工芸品を販売する『リージョンスタイル』という店舗を運営しています。その店舗に興味を示された先代社長は「これからは外国人がたくさん日本を訪れる。関空でわこう堂のお菓子を販売したい!」と熱い想いを話されていました。その後、私の本業でもある商品開発の相談や、豊岡と城崎のわこう堂店舗を成長させるお仕事で、アドバイザーとして携わらせていただきました。わこう堂にも定期的に訪れるようになって、従業員の皆さんとのコミュニケーションも増えて、仲良くなり始めたという時に、先代の社長がお亡くなりになりました。

先代社長が亡くなった後の運営会社の方針は、わこう堂を閉鎖もしくは売却する考えで、私に「継いでやってもらえませんか?」と打診がありました。先代社長は生前、私に「新古さん、城崎みやげはあっても、豊岡みやげは無いんです。私は地元の銘菓を作りたいんです!」と事あるごとに話をされていました。事業承継する前にはいろいろなことを考えましたが、「お客様に愛されていて、豊岡の銘菓へ成長する可能性のあるわこう堂を無くしてはいけない」という想いが、一番強くありました。私の経験上、ゼロからイチを創り出すのは、本当に大変なことだと思っています。わこう堂は2013年にオープンしてからわずか6年足らずの歴史でしたが、それでも大切な歴史です。商品を愛してくれるお客様と積み重ねてきた歴史は、かけがえのないもので、私はそれを失ってはいけないと感じました。

2019年5月、わこう堂の事業を継承しました。
引き継ぐにあたっては、先代社長の想いも大きな動機でしたが、わこう堂そのものにも大きな魅力を感じていました。例えば、人気商品の「ふわっとろっしゃ大福」には、地元・豊岡でこうのとりを育むための農法で作られる『こうのとり米』の米粉を使用しています。さらに「ふわっとろっしゃ大福」は3つの果物が入ったフルーツ大福でもあるのですが、商品開発の視点で考えると、味のバランスを整えるのがとても難しい繊細なお菓子です。このように地元産の食材を使う「コンセプト」と、美味しいお菓子を作り出す「技術力」が備わっていることに、大いに可能性も感じていました。
また、和歌山で醤油や味噌を製造している義父の言葉にも影響を受けています。「物作りではメーカーが重要。売り手がいくら売りたいと言っても、ちゃんと作れる人間がいなければ話にならない」と。だから、商品を売る側だった私としては、“いつかメーカーになってみたい”という気持ちを持っていました。ただ、私は作り手が上とか、売り手が上というのではなくて、良い商品を作って、たくさんの人に知ってもらうためには『作り手と売り手は両輪』だと考えています。

そして、もう一つ事業を引き継ぐ動機になったことがあります。それは、従業員の皆さんの「わこう堂を愛する気持ち」と、仕事に対するやる気を強く感じたからです。今もわこう堂で働いてくれている従業員は、皆さん真面目で誠実です。丁寧な仕事で美味しいお菓子を作る技術を持っています。しかし、まだ新しい物を作ったり、思い切ってチャレンジしたりす

る気持ちが足りないとも感じています。何事にも、もっと自信と余裕を持って取り組んでください。わこう堂を、毎日楽しく笑いの耐えない場所にしましょう。トラブルが起きても誰かの責任にするのではなく、笑いながら皆で解決する職場でありたいと思います。美味しいお菓子は、笑顔や遊び心から生まれます。従業員の皆さんの笑顔は、接するお客様にも伝播していくはずです。

最後に、わこう堂へお越しいただくお客様には、お店でゆったり楽しい時間を過ごしていただきたいと思っています。これからも、もっと人が集える場所にしていきたいと考えています。ご家族や仲の良いご友人と、こうのとりが羽ばたく姿をご覧になりながら、美味しいお菓子とお茶を楽しんでいただけます。
皆さまのお越しを心からお待ちしております。

2020年2月
豊岡わこう堂